ラノブンピック2020

川д川貧乳には魔女の資質がないようです('A`)

1 名前:名無しさん[] 投稿日:2020/02/22(土) 00:15:31 ID:B4mOvoUU0

ブーン系書くのが久しぶりすぎるので練習がてら


イラストは

を使わせていただきました

2 名前:名無しさん[] 投稿日:2020/02/22(土) 06:50:11 ID:B4mOvoUU0

 おろしたての靴が落ち葉を踏んでは音を立てる。

 その小さな音を聞きながら、右足、左足、と私は
足を交互に前に出す。その度足元から音がする。
柔らかく吹く風が木の葉を揺らし、どこからか
聞こえる鳥の鳴き声と混ざり合う。

 光。

 風に吹かれて形を変える木々の隙間から太陽が
わずかに顔を出している。

川д川「私がおひさまを覗いている時、
    おひさまもまた私を覗いているのだ」

 誰に聞かせるでもなくそんなことを口に出し、
私は大きくひとつ息を吐く。この戯言は瞬く間に
自然の中に消えていき、誰にも知られることはない。

 そう思っていたので、耳に届いた返事に私は
文字通り飛び上がるほど驚いた。

3 名前:名無しさん[sage] 投稿日:2020/02/22(土) 06:51:14 ID:B4mOvoUU0
 
('A`)「何言ってんのきみ」

川;д川「どひゃああああああ!!」

 この時私は実際飛び上がっていたことだろう。
おそらくだが、仮に計測することができれば、
2センチか3センチ程度は宙に浮いていた筈である。

 心臓が爆発しそうなほどの加速で脈を打ち、
汗腺が一斉に開いたのが自覚できる。
長く垂らした髪で隠れてくれているとは思うが
私の両耳は真っ赤になっていることだろう。

 いや、隠れていないかもしれない。

 私の動揺と連動するようにして、つむじ風のような
強風が、周囲を巻き込むように発生しているのだ。
私の髪はボサボサと風にあおられてしまっている。

 その神の隙間から、驚愕と羞恥心に赤く染まった
耳が見えていたとしても何の不思議もないだろう。

4 名前:名無しさん[sage] 投稿日:2020/02/22(土) 06:52:27 ID:B4mOvoUU0
 
川;д川「どひゃああああああ!!」

(;'A`)「いや落ち着けって。お前一体何なんだよ」

川;д川「落ち着けるかぁ! お前こそ!
     お前こそいったい何なんだ! 痴漢か!?」

(;'A`)「痴漢じゃねーし。ちょっと、とりあえず
    この風止めない?」

川;д川「止まるかぁ! びっくりしたんじゃああ」

 この不審者との大声による問答でかえって私は
ヒートアップし、落ち着くことなどできなかった。

 風が強く吹いている。

 やれやれ、といった様子で男は説得を諦めて
しまったらしい。風に飛ばされないよう荷物を
守りながら私のことを観察している。

5 名前:名無しさん[] 投稿日:2020/02/22(土) 06:53:43 ID:B4mOvoUU0
 
 猛威を増した強風は私の髪だけでは飽き足らず、
私の体をすっぽりと覆っている外套に干渉できそうな
強さになろうとしていた。

 寒さや魔法を防げる外套であっても物理的な風を
無視することはできはしない。やがて裾が舞い上がる。
髪や木の葉と一緒になって私の外套がはだけていく。

('A`)「あれ? きみ巨乳じゃないんだね」

川#д川「乳見とるやないかいぃ!」

 その台詞を聞いた瞬間、満ち溢れていた私の動揺は
すべて怒りの感情へと昇華された。自分でも驚くほどに
ひどく冷静になっている。

('A`)「いや中まで見えてはないけどさ。
   って、何なに怖い。近寄って。僕をぶつの?」

 私はこの無礼者をぐーで殴りつけることにした。

6 名前:名無しさん[] 投稿日:2020/02/22(土) 06:55:12 ID:B4mOvoUU0
 
川д川「歯ァ食いしばれや!」

('A`)「いやちょっとチョマ――」

川#д川=〇「ッアドーン!」

(*A゜)「うわァー!」

 どーん! と私は男を拳で打ち抜いた。
頬骨のあたりにクリーンヒットした勢いを殺さず
肩をぐいっと入れるようにして破壊の力を注ぎ込む。

 その衝撃に初速を与えられた男の頭部が鎖を断ち切り
自由になろうとしているのがわかる。この場合の鎖とは
彼の首とその骨だ。

 その試みが成功すれば、男は新鮮な生首となって
空を飛ぶことができていたことだろう。
その切断面から噴出する血液が幾ばくかの推進力と
なることさえあったかもれない。

7 名前:名無しさん[sage] 投稿日:2020/02/22(土) 06:55:58 ID:B4mOvoUU0
 
 しかしながら、そのようなことにはならなかった。

 私が手加減したからではない。

 インパクトの瞬間、彼が自分から後方へと体重を流し
その衝撃を和らげることに成功していたからである。

 私の拳を受けた頭部だけではなく、体全体で処理する
ことで、与えられた破壊のエネルギーによる影響を
比較的穏便に済ませることができたのだ。

 “比較的”穏便に、だ。生首ではなく体ごと男は
吹っ飛んだ。その勢いの先には大きな木が立っている。

 背中からぶつかる。ぶつからなかった。

 男は空中で器用に体をコントロールし、足から着地
するようにして大木との衝突をやり過ごしたのだった。

('A*)「いてて――ずいぶんと力の強い貧乳だな?」

川д川「まだ言うか」

8 名前:名無しさん[] 投稿日:2020/02/22(土) 06:56:52 ID:B4mOvoUU0
 
('A`)「わかった、言わない。
   もう貧乳なんて言わないよ絶対」

川д川「ころすぞ」

('A`)「実行可能なやつが言うとシャレにならんな」

川д川「冗談で言ってるつもりもないからね。
    ――それで?」

('A`)「それで?」

川д川「あなた何なの? たまたまお散歩にきた
    素人だなんて言わないでよ」

('A`)「いや、たまたまお散歩にきた素人なんだけどね」

川д川「ころすぞ」

('A`)「こわあい。魔女こわあい」

9 名前:名無しさん[] 投稿日:2020/02/22(土) 06:57:40 ID:B4mOvoUU0
 
 魔女、と呼ばれた私は自分が身にまとっている
濃紺の外套をなんとなく眺める。強風にあおられ、
落ち葉がいくつもひっかかってしまった外套だ。

 私は外套をゆすって付着した落ち葉を落ち葉らしく
地面に落とすと、全体を再度確認することにした。
ゴミなし。綺麗な外套だ。私の体をすっぽりと包み、
この私最大のコンプレックスを隠してくれる相棒だ。

('A`)「妙だな、と思ってるのはこっちも同じだよ。
   ――お前、本当に魔女か?」

川д川「はあ? そんな自己紹介した覚えないけど。
    私は魔女じゃありませ~ん」

('A`)「それじゃあなんで魔女マント着てんだよ」

川д川「持ってるからよ。着ること自体が
    禁止されてるわけじゃないでしょう?」

('A`)「まあ、それは確かに」

10 名前:名無しさん[] 投稿日:2020/02/22(土) 06:59:17 ID:B4mOvoUU0
 
 男が“魔女マント”と呼んだ外套を私は着ている。
お母さんからのお下がりだ。私の母はもちろん魔女で、
中々の凄腕であったらしい。

 らしい、と言わなければならないのは、彼女は私が
ほとんど赤ちゃんのような頃に亡くなり、私はその顔を
見た記憶すらないからだ。

 魔女は短命。これは世界の常識だ。

 そして、豊満な乳を持つのは優れた魔女となるための
大きな資質とされている。これもまた世界の常識で、
私がこの恥ずかしがり屋のおっぱいをコンプレックスに
している最大の理由でもある。

('A`)「魔女じゃない者が魔女マントを着るのは
   バレた場合にリスクが高いが――ま、それだけ
   力が強ければ問題ないか」

 お勧めしないとは言えないな、と男は言った。

11 名前:名無しさん[] 投稿日:2020/02/22(土) 07:02:09 ID:B4mOvoUU0
 
 なんとヘンテコな男だろう、と私は思った。

 おそらく何らかの変態であるに違いない。しかし、
彼からすぐさま何らかの危害を加えられそうには
思えない。世の中には有害な変態と無害な変態がいる
ことだろう。無害な変態は放置すべきだ。

 私は大きくひとつ息を吐く。そして気持ちを切り替える。

川д川「――なんていうか、ごめんなさい。
    ひんにゅー呼ばわりされたことは許せないけど、
    ぶったりしたのはやりすぎだった。
    否は認めたし、もう行ってもいいかしら?」

('A`)「いやぁ、だめだろ。もう少し話そうや」

川д川「はァ?」

 なんと話の通じない男なのだ、と私は思った。

12 名前:名無しさん[] 投稿日:2020/02/22(土) 07:03:45 ID:B4mOvoUU0
 
 ざわり。

 男に対する怒りが心の底に湧いてくる。

 意識して魔力に蓋をしておかないと、コップに注いだ
水が溢れるように、じきに何かをしてしまいそうだ。

 大きくひとつ息を吐く。努めて気を静めて視線を
戻すと、男は私のすぐ側まで知らない間に近寄って
いた。薄気味悪い笑顔をしている。

川д川「うわ近! 何キモぃ!」

('∀`)「いやいやひどいな。キモくはないだろ」

川;д川「キモいキモい、その言葉がキモい顔キモい」

('∀`)「まあまあそれは置いといて。ところでさ、
   きみ魔女じゃないんだよね?
   すると何? 学生? それとも――」

 学生になりかけだったりしない? と男は言った。

13 名前:名無しさん[] 投稿日:2020/02/22(土) 07:04:35 ID:B4mOvoUU0
 
川;д川「なッ――」

 何故それを、と、肯定しているに他ならない疑問を
辛うじて喉のあたりに引っかけて留めた私は、
しかし動揺を隠すことまではできなかった。

('∀`)「うんうん。図星か。たいへんよろしい」

 男はそう言い、不信感を人型に固めて作ったような
顔で私を眺め、何度も深く頷いた。

('∀`)「おかしいな、と思ったんだよ。そんな魔力で
   魔女でもないし、学生だったら僕の耳に入って
   そうなものだしね。そうか~、今年受験生?」

川;д川「――」

('∀`)「こいつも当たりか素晴らしい。
   当然地元の魔女学校だよね。
   魔女になるつもりのないやつが
   そんな恰好しないもんね」

14 名前:名無しさん[] 投稿日:2020/02/22(土) 07:05:23 ID:B4mOvoUU0
 
 男は何かの確信を得ている様子で、わけのわからない
ことを訊いてきては勝手に納得したような顔で頷き、
私に構わずを放ってひとりだけ楽しそうに会話を続けた。

 こんな会話を続けるつもりは私にはまったくない筈
なのだが、男の話が魔女に関することであること、
社会的な立場など私のプライベートな事柄を何故か
的確に言い当てられることなど、無視をするには
あまりに興味深いやら恐ろしいやらといった次第
なのであった。

川д川「うぅ……あなた一体何なんですか。
    変わった趣向の詐欺師ですか」

('∀`)「詐欺師じゃねえよ。まあ詐欺師も
   やればできるかもしれないけどさ。
   ま、でも、僕はどちらかと言うと探偵側だ」

 どちらかというと、レオナルド・ディカプリオよりも
トム・ハンクスに近い、と男は言った。一体何の話を
しているのだろう?

15 名前:名無しさん[] 投稿日:2020/02/22(土) 07:06:23 ID:B4mOvoUU0
 
('∀`)「僕は真実が知りたいんだ。君はそうじゃないの?
   ちょっと待って、どこいくの?」

川д川「いやもうたくさんなんで行こうかと」

('∀`)「だめだめ、進学できなくなっちゃうよ」

川д川「あなたにどんな権利があってそう言うの?」

('∀`)「だって僕はその魔法学校の学長だもの。
   あ、自己紹介がまだだったね」

('A`)+「どうも、学長のドクオです。
    本校は君を歓迎しよう」キリッ

('A`)「ちょっと待って! どこいくの!」

川д川「いやだって嘘じゃんそれ」

16 名前:名無しさん[] 投稿日:2020/02/22(土) 07:09:24 ID:B4mOvoUU0
 
 いくら私が世間知らずのお子様であっても、この男の
ような若さで学校の偉い人になれる筈がないことくらい
はわかっている。

 しかも私はパンフレットで見たことがあるのだ。

川д川「私も、自分が行きたい学校の偉い人くらいは
   顔を知っていますよ。馬鹿にしないでほしいな」

(;'A`)「いやいや嘘なんか言ってねーし!」

川д川「はぁもうわかりましたよ。はいはい、あなたが
    学長ね。もう行ってもいいかしら?」

('A`)「信じてないじゃん!」

川д川「信じる必要ないじゃん。それに、それが本当
    だったとして、だから何? って感じだし」

('A`)「たしかに」

17 名前:名無しさん[] 投稿日:2020/02/22(土) 07:11:50 ID:B4mOvoUU0
 
 何やら納得いただけた様子なので私はその場を立ち
去ろうとした。できなかった。

 何故なら、ドクオと名乗る不審者の口からただならぬ
話が語られはじめたからである。

('A`)「――わかった、別に信じなくていい。
   しかし僕が今後取り組む研究テーマを
   聞いていけ。僕はこれから学校で、
   乳房と魔力の因果関係についての研究を
   するつもりなんだ」

川д川「――」

('A`)「興味はあるみたいだな?」

川д川「――」

('A`)「そりゃあそうだ。お前のような貧乳は、
  今の魔法学校では決して素質があるとは
  見なされないことになっているものだからな」

18 名前:名無しさん[] 投稿日:2020/02/22(土) 07:17:28 ID:B4mOvoUU0
 
 その常識をぶっ潰そうぜ、とドクオは言った。

('A`)「僕と君にならできると思う」

川д川「――どうして、そんなことが」

('A`)「言えるのかって?
   そりゃあ僕がこれまで外国で色々学んできた
   有能な研究者で、君が類まれなる貧乳のくせに
   力の強い、常識はずれの存在だからだ」

川д川「――」

 ドクオは私の周りをゆっくりと歩きながら穏やかな
口調で語りかけてくる。一貫してうさんくさい、信用
などできる筈のない言動である。

 しかし私はそんな気色の悪い男の話に聞き入り、
立ち去る意思をほとんどなくしている自分に気づいた。

19 名前:名無しさん[] 投稿日:2020/02/22(土) 07:18:00 ID:B4mOvoUU0
 
川д川「――でも、私が言うのもなんだけど、
    おっぱいの大きさが魔女の資質と関連するのは
    動かしようのない事実だと思うんだけど」

('A`)「ほう。それはどうしてそう思う?」

川д川「だって私のお姉ちゃんも魔女だもの。
    すごく優秀で――」

('∀`)「――乳がでかい?」

川д川「マジきもいわこいつ」

 私はとてもうんざりとした気分になった。

20 名前:名無しさん[] 投稿日:2020/02/22(土) 07:18:59 ID:B4mOvoUU0
 
 しかしながら、事実は否定のしようがない。

 少し年の離れた姉は、とても優しくて立派な魔女だ。
母譲りの美貌と素質と巨大な乳を持っている。

 どれも私にはないものだ。

 母の顔を私は知らないが、抱きしめられた幸せな記憶
は頭のどこかに保存されており、彼女のことを思い出
そうとすると、何とも言えないふんわりとした気持ちと
共に復元される。おそらくだけれど、私の母もまた
優秀な魔女で、豊満な体をしていたに違いない。

 母や姉を抜きにしても、世にあふれる魔女は往々に
して豊かな乳房を持っている。

('A`)「なるほどね」

 少し考え込むような顔をドクオは見せた。

21 名前:名無しさん[] 投稿日:2020/02/22(土) 07:30:06 ID:B4mOvoUU0
 
('A`)「相関関係と因果関係の違いが君には
   わかっているのかな?」

川д川「そーかん? いんが?」

('A`)「えっとね、相関関係というのは、たとえば
   AとBって事象があったとして、
   Aが増えていればBも増える傾向にあるね、
   っていうような関係のことをいうんだけども」

川д川「じしょー?」

('A`)「あ、そこから?」

 この貧相な顔の男は、むかつく表情でポリポリと
頭を掻いた。私はそれを不快に思った。

22 名前:名無しさん[] 投稿日:2020/02/22(土) 07:32:08 ID:B4mOvoUU0
 
('A`)「そうだなあ、たとえ話でもしようか――
   うわ何こわ!?」

川#д川「いや別に? ちょっと知らない単語を並べて
     マウント取られて学歴コンプがささくれ立ってる
     だけだけど?」

(;'A`)「えぇ~そんなつもりはないんだけどなあ。
    ほら、今から説明してあげるからさ、
    ひとつ機嫌を直してくださいよ」

川#д川「説明して“あげる”?」

('A`)「説明させていただきます――」

川д川「仕方ない。つづけたまえ」

23 名前:名無しさん[] 投稿日:2020/02/22(土) 07:34:01 ID:B4mOvoUU0
 
('A`)「ええとね、そうだな、運動能力の話にしようか。
  足の速さとお菓子でいいや。ところで僕は最近の
  この国の情勢についてよくわかってないんだけど、
  君の家では日常的におやつを食べられてるかな?」

川д川「おやつ? ええと、木の実や簡単なものなら
    自分で勝手に食べたりするけど、たとえばケーキ
    なんかは特別な日じゃないとお目にかかることも
    できないね」

('A`)「そんなものか。この数年の間にだいぶ豊かに
   なったものだね。それとも君のおうちが裕福
   なのかな。魔女の家系なんだろうしね」

川д川「そうね、どちらかというと裕福な方だと思う」

('A`)「この場合、お菓子をたくさん食べてる人は
   そうじゃない人と比べて足が速い傾向にあると
   思う?」

川д川「傾向とかは知らないけど、お菓子食べたからって
     足が速くなるとは思えないね」

24 名前:名無しさん[] 投稿日:2020/02/22(土) 07:35:46 ID:B4mOvoUU0
 
 そうだよね、とドクオは言った。

('A`)「お菓子を食べたら足が速くなるなんて思えない。
   誰だってそー思う。おれだってそー思う」

('A`)「だけどね、おそらくだけど、
   データを取って解析したら、お菓子をたくさん
   食べている子は足が速いって結果が得られるん
   じゃないかと思うんだ」

川д川「何それ、なんで?」

('A`)「何故ならお菓子をたくさん食べられるような家庭
   は裕福で、ご飯をたっぷり食べられ良い靴を
   履いているかもしれないからさ」

川д川「ふぅん。馬鹿みたいな話ねえ」

('A`)「馬鹿みたいだと思う?」

25 名前:名無しさん[] 投稿日:2020/02/22(土) 07:36:57 ID:B4mOvoUU0
 
川д川「だってさ、お菓子と足の速さなんて、
    元々関係あるはずないじゃん。
    それをよくわかんない考え方して、無理やり
    関係あるとか言っちゃうわけでしょ?」

('A`)「そうだよね。それで、僕はバストの大きさと
   魔女としての素質の関係性が、君の言う
   馬鹿みたいなものなんじゃあないかなと
   思っているわけなんだ」

川д川「――!」

('A`)「だってさ、おっぱいがでかけりゃ魔女として
   有能になりそうだなんて、そんなことがある筈
   ないと思わない?」

川д川「――」

('A`)「僕はね、それを証明したんだ」

26 名前:名無しさん[] 投稿日:2020/02/22(土) 07:39:01 ID:B4mOvoUU0
 
 私の頭の中で常識が揺らぐ。

 私はこれまでずっとこの小さな胸をコンプレックスに
思ってきたのだ。良い魔女となるには大きな胸をして
いなければならない。そうでなければ魔女を目指すだけ
時間の無駄で、何か他の職業に就くことを考えた方が
身のためだ。

 そんな常識の中で私はこれまで生きてきた。

 だからこの身にどれほどの魔力が備わっていようと、
目に見えない“素質”というものがないのだから、魔女
学校への進学希望は叶えられてこなかった。

 私にできることはせいぜい毎日たくさん牛乳を飲んで
なるべく睡眠時間を長くすることと、魔力をどこかで
発散させる時には魔女用の外套を着こんでこの身を守る
くらいのことだった。現在私の保護者である姉は親切で
優しいが、魔女を目指す手助けをするのではなく母の
形見の外套を私に貸してくれるだけだった。

27 名前:名無しさん[] 投稿日:2020/02/22(土) 08:34:57 ID:B4mOvoUU0
 
 この私のもつ常識が、思い込みに過ぎないとでも
いうのだろうか?

('A`)「研究する価値はあると思う。おそらく魔女と
   しての素質があるというのも、乳がでかいと
   いうのも、どちらも同じく“現象”なんだ。
   “原因”はほかにあるんだと思う」

('A`)「僕はそれを解き明かしたい」

川д川「――それに、私が必要なの?」

('A`)「そうだよ。君はその若さと乳房で魔力に溢れて
   いる。明らかに魔女としての素質があるだろ。
   これは常識的にはあり得ないことだ。
   しかし、こうして現実にあり得ている!」

28 名前:名無しさん[] 投稿日:2020/02/22(土) 08:35:43 ID:B4mOvoUU0
 
 完全に私を被検体として扱うつもりの男に、私は
何故だかこれまでほど強い忌避感を抱かなかった。

 気色悪さが限界突破してしまったのかもしれないし、
ずっとこれまで魔女としての素質がまったくないと
されてきた人生において、はじめてはっきりとその
素質を認められたからかもしれない。

 あるいは、男性からまっすぐに見つめられるという
はじめての体験がそうさせたのかもしれない。

 いや、ないか。

 こんな気色の悪い男に限ってそれはない。

川д川「それで、どういうことを調べるつもりなの?
   プランは立っているんでしょうね」

 あまり期待をせずにそう訊いてみると、ドクオは
ニヤリと笑って頷いた。好意を抱きようのない顔だな、
と私は思う。先ほど忌避感なく見られると思ったのは
どうやら勘違いだったらしい。

 私のテンション低下に構わず男は熱弁を続けた。

29 名前:名無しさん[] 投稿日:2020/02/22(土) 08:43:46 ID:B4mOvoUU0
 
('A`)「具体的な方法は追々説明するとして、とりあえず
   最優先で用意しなければならないのは、
   ちゃんとした評価基準とその評価方法だろう」

('A`)「これは目星がついていて、実は僕のこれまでの
   研究で、魔力の大元となる器官の特定がほぼほぼ
   できそうになっているんだ。これがわかれば魔力
   の微妙な変化や、魔力として働く前段階での何ら
   かの物質の評価ができる。そして、おそらくこれ
   が“良い魔女となるための資質”なんて呼ばれる
   ものの正体だ」

(#'A`)。「それができれば勝ったも同然、貧乳だが魔力
    の強い君やそこらへんにいる力の強い爆乳魔女
    の体では感受性が高いけれど、普通の貧乳や
    巨乳の体では感受性が低い要素を特定すれば
    いい」

('∀`)「どうだ! うはー夢がひろがりんぐだろう!!」

川д川「よくわからんよ」

30 名前:名無しさん[] 投稿日:2020/02/22(土) 08:45:02 ID:B4mOvoUU0
 
 私にわかったのはこの男が並々ならぬ情熱を魔女研究
に燃え上がらせていることと、どうやら何らかの展望を
既に考えられているということくらいのものだった。

川д川(いや、他にもあるな――)

 私は静かにそう思う。

 これは確信と言ってよいだろう。私はこの貧相な顔
の男が信用できない。

 そして、信用できない人間がよくわからない内容の
話を熱く語る様というのは、身の毛のよだつ気味の悪さ
をしているということである。

('∀`)「実は当たりをつけている器官はリンパ節だ。
   だからリンパマッサージなんてのも試すべき
   ことに含まれるだろう。リンパを流すだけです
   からね、これはあくまで施術ですからね、
   なんつってさ! うっひょー!」

川д川(テラキモス)

31 名前:名無しさん[] 投稿日:2020/02/22(土) 09:06:49 ID:B4mOvoUU0
 
 これまでの人生の中で培ってきたフェイドアウト・
テクニックを駆使して私は熱弁する男の視界を離れた。
彼は己の力説に熱中するあまりジェスチャーが大きく
なりすぎていて、まるで世界に向かって演説している
ような形になっていたのだ。

 ススス、と忍びの動きで私は彼から遠ざかる。

Σ('A`)「あれいねえ!?」

 その発覚の瞬間が鬼ごっこのはじまりだった。
私は彼から遠ざかる。彼は私を追いかける。それほど
熱心に追いかけてはこなかった。

('A`)「わかってるだろうな! 入学すれば! 
   お前には僕の研究に協力してもらう!」

 そんな負け犬の遠吠えが遠くで聞こえる。遠吠え
なのだから当然といえば当然だ。

32 名前:名無しさん[] 投稿日:2020/02/22(土) 09:07:26 ID:B4mOvoUU0
 
川д川「いやあ、それにしても気持ちの悪い男だった」

 這う這うの体で帰宅する道すがら、私は独り言で
そう言った。平常心を取り戻すためである。
冷静な声を耳に届け、心を冷静なものに整える。

 家に着くころにはすっかり私は落ち着いていた。

川д川「ただいまー」

川 ゚ -゚)「おかえり。早かったな」

川д川「いやあ、それが森で不審者に遭遇してさ。
   なんとか死にも殺しもせずに帰ってきた」

川 ゚ -゚)「えらいえらい。世界は危険に満ちてるな」

川д川「本当だよ。おうちが一番」

川 ゚ -゚)「こいつめ、ハハハ」

33 名前:名無しさん[] 投稿日:2020/02/22(土) 09:08:06 ID:B4mOvoUU0
 
 そのままの流れで優しく寛容でおっぱいも大きい
お姉ちゃんと雑談しながらお茶をする。素晴らしい
ひとときだ。

 だから優れた魔女でもある彼女から驚きのニュースが
聞かされた時、私は我が耳を疑った。

川 ゚ -゚)「そういえば魔女学校な、今年から学長が変わる
     らしいぞ。入学基準も変わるかもしれない。
     お前も色々対策してたが、ひょっとしたら
     そんなものは不要となって、単純な現魔力量
     なんかでイケるかもしれない」

 私にとって何より悲劇だったのは、私のこの誇るべき
姉が、このニュースをまったくのグッド・ニュースと
して私に届けてきたことだった。

川;д川「学長が――変わる」

川 ゚ -゚)「噂では、次の学長は歳こそまだ若いけれど、
     外国で勉強してきた新進気鋭の有能らしい。
     良くしてくれると嬉しいな?」

34 名前:名無しさん[] 投稿日:2020/02/22(土) 09:08:41 ID:B4mOvoUU0
 
川;д川「嗚呼――!」

 自分の中では処理しきれないこの感情を、私は絶叫に
昇華した。思わず取っていたのは“祈り”の姿勢だった。

 すべてを魔力に変換してこの世を破壊してしまいたい
衝動に身を任せなかった自分を褒めてあげたい。
もっとも、そんなことをしようとしても、ただちに
お姉ちゃんに防がれてしまうのがせいぜいだろうが。

 何を考えているのか自分でも整理がつかなくなって
きた。とにかく私が先ほど会った薄気味悪い男は
ひょっとしたら本当に私が入学を希望している魔女学校
の学長なのかもしれなくて、不信感しか抱けない内容の
研究に私を巻き込もうとしているのかもしれない。

35 名前:名無しさん[] 投稿日:2020/02/22(土) 09:09:17 ID:B4mOvoUU0
 
 フラッシュバックのようにドクオの放った言葉が
私の脳裏に蘇る。彼の私に対する印象を決定づけ、
嫌悪感の源となった言動だ。

 たしかその時私はこう言った。

川д川「――よくわかんないんだけど、それって
   別に私を使う必要なくない?
   ほーまんな魔女らと素人を比較して
   違いを考えればいいだけじゃないの?」

 その私の素人質問に、いい質問だね、と彼は答えた。

('A`)「それは実にいい質問だ。
   ――あるいは僕は、真に科学的な視点で
   この研究をできてはいないのかもしれない」

 仮定があるんだ、とその時ドクオは私に言った。

36 名前:名無しさん[] 投稿日:2020/02/22(土) 09:09:58 ID:B4mOvoUU0
 
('A`)「優れた魔女は、本来貧乳であるべきなんだ。
   ――そうだよ、僕の好みの問題だよ。
   優れた魔女は本来貧乳であるべきだ。
   重要なことなので2回言わせてもらったよ」

(*'A`)「だってほら、貧乳ってステータスじゃないか!
   素晴らしいことだよ! たまらない!
   この良さがわからないなんて、
   世の中の方が狂ってるんだと思うんだよね!」

川д川「エェ何こいつまじキモイ」

 彼はとてもキモかったのだ。

37 名前:名無しさん[] 投稿日:2020/02/22(土) 09:11:03 ID:B4mOvoUU0
 
川 ゚ -゚)「どうかしたか?」

 いぶかしげな表情の姉に私は自分を取り戻す。
あぶないあぶない。あやうく貧乳フェチへの嫌悪感に
この身を焼き尽くしてしまうところだった。

川д川「いやあ、なんでもないよ」

川 ゚ -゚)「なんだあ? ほら、悩みごとがあるなら
     お姉ちゃんに言ってみろ」

川д川「うわあ、ちょっとやめてよ」

 優しいお姉ちゃんが私に近寄り豊満な乳房で
スキンシップを図ってくる。悪い気持ちはまったく
しないが、どうしても私は自分のコンプレックスを
再確認する。

 その瞬間、決して受け入れられない気色の悪い男の
顔が頭にちらつき、私は脳内で彼を撲殺した。


     おしまい。

38 名前:名無しさん[sage] 投稿日:2020/02/22(土) 21:24:38 ID:Imlr.a760
乙!貞子キモがってるけどこのドクオ好き

39 名前:名無しさん[sage] 投稿日:2020/02/28(金) 10:09:25 ID:.B8WKpK60
otu

40 名前:名無しさん[sage] 投稿日:2020/03/01(日) 11:27:16 ID:cXE8UV.I0
ドクオが思いっきりドクオで好き

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